10分で分かるクリッパ回路の原理
今回は「ダイオードの基本的な仕組み」と「クリッパ回路の原理」について説明します。
クリッパ回路は、ダイオードやバイアス電圧の向きによっても出力波形は変わりますが、こんな波形になります。
1.ダイオードの基礎
まずはダイオードの基本をおさらいしましょう。
〇順方向電圧
順方向電圧をかけるときはアノードの電位がカソードの電位より大きいときです。このとき抵抗は0[Ω]になりますから、1本の導線と同じような状態になります。
〇逆方向電圧
一方、逆方向電圧をかけるときは、カソードの電位がアノードの電位より大きいときです。このとき抵抗は無限大になりますから、導線が切れたのと同じ状態になります。つまり電流は流れません。
2.クリッパ回路の動作原理
〇パターン1
まずは下の回路パターンを見ていきます。
左の回路にVi=Vmsinωt[V]を入力したときの出力波形を考えてみましょう。入力電圧は右のようなVmが最大値の正弦波です。
・0<Vi<Eのとき
出力波形は下の赤線のようになります。
・E<Vi<Vmのとき
EよりViの方が電位が大きいので、仮に電流が流れるとしたら時計回りに流れます。するとダイオードには逆方向電圧がかかるので、断線と同じ状態になり、回路には電流は流れません。
つまりI=0[A]。するとRの電圧降下もV=I×Rより0[V]になるので、抵抗部分はただの導線と化してしまいます。
b点を0[v]とし、基準点として考えると、a点はVi[V]になりますね。
出力波形は、0<Vi<Eの波形と合わせるとこんな感じ。
・-Vm<Vi<0のとき
Viがマイナスの時はViの絶対値がEより大きかろうと小さかろうと電流は反時計回りに流れます。
ダイオードには順方向電圧がかかるので、b点を0[v]とし、基準点として考えると、a点はE[V]になりますね。
-Vm<Vi<0のときの出力はE[V]なので、これまでの波形と合わせると出力波形は下のようになります。
〇パターン2(ダイオードとバイアス電圧の向きを反転)
パターン1のダイオードと電池の向きが逆になったパターンを考えてみます。入力電圧パターンはパターン1と同じです。
・0>Vi>-Eのとき
-EのほうがViより電位が小さいので、仮に電流が流れるとしたら時計回りです。
「-Viの方が大きいなら、電流は反時計回りに流れることになるのでは・・・?」と思った方もいると思いますが、電流は時計回りです。
この回路を横から見たら上のように表せます。
水が落差の大きい方に流れるのと同じように、電流も落差の大きい-Vi[V]の方(時計回り)に流れます。
ダイオードに順方向電圧がかかるので導線と同じ状態になります。
b点を0[v]とし、基準点として考えると、a点は-E[V]になりますね。
出力波形はこんな感じ。
・-E>Vi>-Vmのとき
ViがEより電位が小さいので、電流は反時計回りに流れます。ダイオードには逆方向電圧がかかるので、断線と同じ状態になります。するとこの回路には電流は流れないということになりますね。
つまりI=0[A]。するとRの電圧降下もV=I×Rより0[V]になるので、抵抗部分もただの導線と化します。
b点を0[v]とし、基準点として考えると、a点は-Vi[V]になりますね。
出力波形は、0>Vi>-Eの波形と合わせるとこんな感じ。
・Vi>0のとき
Viが正のときは、Viの絶対値がEより大きかろうと小さかろうと電流は時計回りに流れます。
ダイオードには順方向電圧がかかるので、a点は-E[V]、b点は0[V]となりますね。
Vi>0のときの出力波形は、これまでの波形と合わせると下のようになります。
〇ピーククリッパとべースクリッパ
パターン1と2の他に、あと2通りダイオードと電池の配置の仕方があります。
まずはこれ。
これも、パターン1や2と同じように考えると出力波形はこうなります。
波形のトップの部分だけカットされていますね。この波形になる回路をピーククリッパといいます。
一方、こちらの回路。
出力波形はこんな感じ。
波形の底の部分だけカットされています。このような波形になる回路をべースクリッパといいます。
3.クリッパ回路のまとめ
クリッパ回路は、ダイオードの特性をしっかり理解していれば解ける問題です。慣れないうちは、入力電圧ごとに場合分けして出力波形を考えてみましょう。