心電図波形・QRS波のトリビア~右脚ブロックと左脚ブロック~
今回は、心電図波形のうちST部分を細かく見てみます。
- 正常なQRS波の条件
- 異常なQRS波の原理
について解説します。
1.正常なQRS波
そもそも「QRS波」というのは、心電図波形で言うとQ波のはじまり~S波の終点です。
正常な幅は0.1秒未満(2.5マス分)。
ちなみに、正常な幅のQRS波を「marrow QRS」
正常より幅の広いQRS波を「wide QRS」といいます。
「marrow」は英語で「狭い」という意味。そのまんまですね。
2.異常なQRS波
〇右脚ブロック
右脚ブロックというのは、刺激伝導路のうち右脚が遮断された状態です。
そのため電気信号は下のような順序で伝わります。
- 房室結節にたどり着いた電気信号は、左脚から右脚に行こうとするが、右脚はブロックされているので右脚に行こうとしても行けない。
- 右脚に行けないので、電気信号は左脚を伝わる。
- 左脚を伝わった後は、左室から右室方面へ伝わる。
V1目線の心電図波形は下の通りです。
P波が記録された後、r波というちょっと上がった波が出てきます。r波は、左脚から右脚に移ろうとする電気信号です。V1電極に向かうように流れるのでちょっと上がっています。
r波の後はS波が来て少し下がります。S波は、電気信号が左脚を伝わっているためです。V1電極から遠ざかるように伝わるのでちょっと下がっています。
S波の後は大きなR波がズドーンと上昇しています。R波は、電気信号が左心系から右心系方面へ伝わっているからです。V1電極に向かうように流れるので大きく上がっています。
ちなみに、このR'波が大きくなるV1波形は、それぞれの波の名前をとって「rSR'(読み:アール エス アールダッシュ)」と言います。
〇左脚ブロック
左脚ブロックというのは、刺激伝導路のうち左脚が遮断された状態です。
そのため電気信号は下のような順序で伝わります。
- 房室結節にたどり着いた電気信号は、左脚から右脚に伝わり、右脚を伝わる
- 右心系から左心系へ全体的に伝わる
- 脱分極
V1目線の心電図波形は下の通りです。
P波が記録された後、r波というちょっと上がった波が出てきます。r波は、房室結節にたどり着いた電気信号が左脚から右脚に伝わり、右脚を伝わる電気信号です。V1電極に向かうように流れるのでちょっと上がっています。
r波の後はS波が来て大きく下がります。S波は、電気信号が右心系から左心系へ全体的に伝わるためです。V1電極から遠ざかるように全体的に伝わるので、大きく下がっています。
S波の後は、脱分極のためにT波が上昇しています。