【臨床工学技士就職試験で頻出!】予想ヘマトクリット値と希釈率
予想ヘマトクリット値
リンゲル液などの充填液が含まれた時の患者さんのヘマトクリット値を求める計算式です。
体ヘマトクリットとは、体の中心(大動脈)を流れる血液のヘマトクリットで、患者ヘマトクリットは、患者から採血した血液(静脈血)のヘマトクリットです。(健診の採血をイメージすれば分かりますが、通常採血は腕の静脈から行います)
静脈は容量血管なので血液が多く存在し、しかも流れも遅いため、ヘマトクリットは動脈より高いです。つまり動脈血は静脈血よりヘマトクリットは低く、静脈血の9割、つまり0.9しかありません。酸素供給に関わるのは動脈血なので、静脈血のヘマトクリットを動脈血のヘマトクリットに換算して計算を行います。
予想ヘマトクリット値は20%以上が望ましいです。もし、予想ヘマトクリット値が20%を切った場合は輸血をして赤血球量を増やします。
充填量とは、人工心肺回路を満たしているプライミング液のことです。
希釈率
体内の血管を流れている液体のうち、血球成分などを除いた水分のみの割合を示しています。「どれだけ血液が薄まっているか」ということです。
希釈率は20~30%になるようにします。
【例題】予想ヘマトクリット値と希釈率
ヘモグロビン15.0(g/dL)、体重60(kg)の患者さんに体外循環を行う場合、予想ヘマトクリット値と希釈率を求めよ。このとき、人工心肺回路の充填量を1200(mL)とする。
〇予想ヘマトクリット値
①循環血液量を求める
血液の量は体重の1/13です。なので、循環血液量は60(kg)÷13=4.615(L)=4615(mL)になります。
②患者ヘマトクリット値を求める
患者ヘマトクリット値を求めたいのですが、与えられた情報はヘモグロビンだけです。
通常、ヘモグロビン(g/dL):ヘマトクリット(%)=1:3なので、この場合は患者ヘマトクリット値は15×3=45(%)と求められます。
③式に当てはめて計算
充填量が1200mLなので、予想ヘマトクリット値を求める式における「循環血液量」と「総充填量」「患者ヘマトクリット値」の情報が揃いました。ここでは輸血はしていないので「輸血量」を式に当てはめる必要はありません。
よって予想ヘマトクリット値は約32%と分かります。
この結果から、予想ヘマトクリット値は20%以上なので、適切であることが分かりますね。
〇希釈率
薬液充填量が1200mL、循環血液量が4615mLなので、1200/(4615+1200)×100≒20.6より、希釈率は約21%になります。
希釈率も適正範囲内に入っています。