臨床実習のために覚えておきたい略語・用語集1
1.カテーテル業務(心カテ・アブレーション)
〇PVI
肺静脈隔離のこと。
心房細動の原因は、肺静脈の根元が発端となることが多いです。
そのため、心房細動を抑えるために、肺静脈の根元をぐるっと囲むように焼却して、肺静脈と左心房間の電気的連結を遮断します。
この手技のことをPVIと言います。
〇PMI
ペースメーカー植え込み術のこと。
〇フラッター
心房粗動のこと。
心房粗動は英語で「atrial flutter」というため、略してフラッターと言います。
〇Af
心房細動のこと。
アブレーションカテーテルの適応。
心電図ではRR間隔がバラバラで、QRS 波は基本的に正常、P波がみられません。さらに基線の細かく動揺します。
〇SVC・IVC
SVCは上大静脈、IVCは下大静脈のこと。
アブレーションカテーテルの対象となるAfは、肺静脈だけでなくSVCが発端となって起こる事もあります。
IVCとセットで覚えましょう。
「superior」は「優れた」、「inferior」は「劣った」という意味です。
別に下大静脈が劣っている訳では無いのですが・・・。
〇DEB(DCB)
薬剤溶出バルーン(薬剤コーティングバルーン)のこと。
薬剤溶出ステントは聞いたことがあると思いますが、バルーンバージョンもあります。
〇ACS
急性冠動脈症候群のこと。
急性心筋梗塞や不安定狭心症など、冠動脈が急速に狭窄・閉塞して心筋が虚血、壊死する病の総称です。
〇サイナス
心臓の正常リズム(洞調律)のこと。
〇RCA・LAD・LCX・LMT
RCAは右冠動脈、LADは左前下行枝(ひだりぜんかこうし)、LCXは左回旋枝(ひだりかいせんし)、LMTは左主幹部です。
冠動脈のうち、上の4つだけは覚えておきましょう。
〇CTO
慢性完全閉塞病変のことで、血管が完全に詰まってしまうことです。
〇ABI
足関節上腕血圧比のこと。
上腕動脈の血圧に対する足関節の血圧の比を表しています。
動脈硬化などで下肢の動脈が狭窄していると血流が悪くなるため、足関節血圧が上腕血圧よりも低くなり、値が低くなります。
正常は1.00~1.40で、0.9以下だと下肢閉塞性病変と判断されます。
〇FFR
冠血流予備量比のこと。
冠血流量が最も増加したときの、冠血流の狭窄遠位部圧と狭窄近位部圧の比です。
値が0.8以上だと正常で、0.75以下だと異常(虚血)となります。
〇CAG
冠動脈造影のこと。
冠動脈の走行や形態を観察し、冠動脈病変の有無や程度、部位を診断する検査です。
冠動脈疾患の重症度の診断や治療効果の確認のために行われます。
〇PCWP
肺動脈楔入圧のこと。
「はいどうみゃくせつにゅうあつ」と読みます。
2.冠動脈バイパス術
〇CABG
冠動脈バイパス術のこと。
冠動脈の狭窄部位よりも末梢側の血管と、大動脈をバイパスして、末梢側の血流を確保する手術です。
狭窄部分の治療をする訳ではありません。
〇グラフト
バイパスするのに用いる血管のことです。
〇LITA・RITA・SVG
LITAは左内胸動脈、RITAは右内胸動脈、SVGは大伏在静脈です。
上の3つは、CABGでグラフトとしてよく用いられる血管です。
LITAは「リタ」、RITAは「ライタ」と読みます。
3.心筋保護
〇アンテ
順行性心筋保護のこと。
注入速度:250~400mL/min
注入圧:80~100mmHg
閉まった大動脈弁と大動脈遮断している鉗子の間の空間に心筋保護液を流せば、自然と冠動脈へ流れていく仕組みです。
〇レトロ
逆行性心筋保護のこと。
注入速度:50~100mL/min
注入圧:40mmHg以下
右心房に開口する冠状静脈洞から心筋保護液を注入する方法です。
静脈は動脈に比べて血管壁が薄いので、注入圧には十分気をつけなければなりません。
〇セレクティブ
選択的心筋保護のこと。
注入速度:200~300mL/min
注入圧:150~200mmHg以下
カニューレを直接冠動脈口へ挿入して心筋保護液を送ることです。
大動脈弁がきちんと閉まらない場合(大動脈弁閉鎖不全症など)、アンテだと左心室に心筋保護液が逆流してしまいます。
そんなときにセレクティブを使います。
〇hot shot
常温心筋保護液のことです。
手術が終わる時、心筋保護液によってキンキンに冷えた心臓を急に復温すると心臓にダメージがかかってしまいます。
そのため、大動脈遮断解除前に温かい心筋保護液を流して、心臓を慣らしていくのです。