あおいのMEちゃんねる

臨床工学技士を目指す大学3年生(20)です。

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ラプラス変換を使った過渡現象の解き方~直列回路編~

今回は

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今授業で過渡現象やってるんだけど、電流とか電圧の求め方が複雑すぎて分かんない…。何かもっと簡単な方法ないの?

という質問に答えます。過渡現象は、ラプラス変換を使えば簡単に解けちゃいます。

 

この記事の内容↓

 

これまで、過渡現象の理屈もよく分かっておらず、なんとなく電流や電圧の式だけ暗記していた人は必見です。過渡現象を微分方程式ではなく「ラプラス変換」で解くだけで、理屈が分かるようになります。 

この記事ではラプラス変換の基礎が分かっている前提で話を進めていきます。「ラプラス変換が何か分からない!」という人は、まず教科書などでラプラス変換の基礎を勉強してから読み進めてくださいね。

1.ラプラス変換の基礎

 〇基本の考え方

そもそもラプラス変換とは、難しい時間関数の計算式をカンタンに解くための道具です。

とりあえず、RL直列回路の過渡現象を例として考えてみましょう。

 

図の回路において、スイッチを閉じたときに流れる電流i(t)を示す式を求めよ。ただし、スイッチを入れた瞬間をt=0とする。

ちなみに答えは\(i(t)=\frac{E}{R}(1-\mathrm{e}^{-\frac{R}{L}t})\)です。

「とりあえずこの式だけ覚えてる・・・」という人もいるのではないでしょうか。ですが、数学では根拠を理解するのが大事です。この式を導出するために主に微分方程式という方法を使います。微分方程式による導出方法は「電気の資格とお勉強」というサイトで紹介していますよ。

 
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微分方程式で解くと結構複雑で難しいんですね・・・。どうやったら簡単に計算できるんですか?

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あおい

そんな時に使うのがラプラス変換だよ!

 〇便利な暗記表

ラプラス変換で過渡現象を解くときは、暗記表を使って解きます。

過渡現象を解くときにわざわざラプラス変換の途中式まで書いていたら時間が足りなくなってしまいますからね。

過渡現象で用いるラプラス変換の公式はたいてい決まっているので、ここでは、過渡現象を解くときによく使うラプラス変換の公式を表にしてみました。

時間関数 複素関数
\(1\) \(\frac{1}{s}\)
\(i(t)\) \(I(s)\)
\(\frac{di(t)}{dt}\) \(sI(s)-i(0)\)
\(\mathrm{e}^{-αt}\) \(\frac{1}{s+α}\)
\(\int i(t) dt\) \(\frac{I(s)}{s}+\frac{q(0)}{s}\)

2.ラプラス変換を使って過渡現象を解いてみよう

 〇RL直列回路

問:図のRL回路において、スイッチSを閉じたときの電流i(t)をラプラス変換を用いて求めよ。

 〇解説

  ①電圧に関する式を立てる

先に数値を入れて計算するのではなく、いったん式を作ってから数値を入れていきます。

まず、電圧に関する式を書きます。直列回路なので

$$V_R+V_L=Ri(t)+L\frac{di(t)}{dt}=E$$

  ②両辺をラプラス変換

両辺をラプラス変換します。暗記表を見ながらやっていきましょう。

時間関数 複素関数
\(1\) \(\frac{1}{s}\)
\(i(t)\) \(I(s)\)
\(\frac{di(t)}{dt}\) \(sI(s)-i(0)\)
\(\mathrm{e}^{-αt}\) \(\frac{1}{s+α}\)
\(\int i(t) dt\) \(\frac{I(s)}{s}+\frac{q(0)}{s}\)

  • \(Ri(t)\)・・・\(R\)は定数なのでそのまま。時間関数\(i(t)\)をラプラス変換すると\(I(s)\)。よって\(Ri(t)\)をラプラス変換すると\(RI(s)\)
  • \(L\frac{di(t)}{dt}\)・・・\(L\)は定数なのでそのまま。時間関数\(\frac{di(t)}{dt}\)をラプラス変換すると\(sI(s)-i(0)\)。よって\(L\frac{di(t)}{dt}\)を微分すると\(L(sI(s)-i(0))\)
  • \(E\)・・・\(E×1\)と見ます。\(E\)は定数なのでそのまま。時間関数\(1\)をラプラス変換すると\(\frac{1}{s}\)。よって\(E\)をラプラス変換すると\(\frac{E}{s}\)となります。

これより

\(RI(s)+L(sI(s)-i(0))=\frac{E}{S}\)

\(i(0)\)は初期条件の電流です。初期条件とは、ここではスイッチを閉じる1つ前の場面のこと。つまりスイッチが開いている状態の電流\(i(0)\)は\(0(A)\)ですよね。よって

\(RI(s)+L(sI(s))=\frac{E}{S}\)

となり、\(i(0)\)が消えました。

  ③「\(I(s)=○○\)」の形に書き換え

求めたいラプラス変換は\(I(s)\)についてなので、「\(I(s)=○○\)」の形に書き換えます。

$$I(s)=\frac{E}{s(R+Ls)}$$

この式を部分分数分解すると

$$I(s)=\frac{E}{Rs}-\frac{EL}{R(R+Ls)}=\frac{E}{R}(\frac{1}{s}-\frac{L}{R+Ls})$$

  ④逆ラプラス変換

ラプラス変換して出した式\(I(s)=\frac{E}{Rs}-\frac{EL}{R(R+Ls)}=\frac{E}{R}(\frac{1}{s}-\frac{L}{R+Ls})\)を逆ラプラス変換し、\(I(s)\)を\(i(t)\)に戻します。

時間関数 複素関数
\(1\) \(\frac{1}{s}\)
\(i(t)\) \(I(s)\)
\(\frac{di(t)}{dt}\) \(sI(s)-i(0)\)
\(\mathrm{e}^{-αt}\) \(\frac{1}{s+α}\)
\(\int i(t) dt\) \(\frac{I(s)}{s}+\frac{q(0)}{s}\)

  • \(\frac{1}{s}\)・・・暗記表より、逆ラプラス変換すると\(1\)になる。
  • \(\frac{1}{R+Ls}\)・・・この形は暗記表に載っていないので、このままでは逆ラプラス変換できません。暗記表の\(\frac{1}{s+α}\)に形を合わせるため分子と分母をそれぞれLで割って変形します。すると、\(\frac{1}{R+Ls}=\frac{\frac{1}{L}}{\frac{R}{L}+s}=\frac{1}{L}×\frac{1}{\frac{R}{L}+s}\)となります。\(\frac{1}{\frac{R}{L}+s}\)の部分が、なんだか見たことのある形になりました。暗記表を見てみてください。\(\frac{1}{s+α}\)に形がそっくりですよね。「\(α\)」が「\(\frac{R}{L}\)」になるので、\(\frac{1}{R+Ls}\)をラプラス変換すると\(\mathrm{e}^{-\frac{R}{L}t}\)になります。

よって\(I(s)\)を逆ラプラス変換すると

$$ i(t)=\frac{E}{R}(1-\mathrm{e}^{-\frac{R}{L}t})$$

となります。これに与えられている数値を当てはめて、

$$ i(t)=\frac{E}{R}(1-\mathrm{e}^{-\frac{R}{L}})=2(1-\mathrm{e}^{-3t})$$

答えが導き出せました!!

どうでしょうか。ラプラス変換の基本的な考え方や公式が理解できていれば、解けると思います。

少し時間はかかるかもしれませんが、少しづつ慣れていきましょう!

 〇RC直列回路

問:図のRC回路において、スイッチSを閉じたときの電流\(i(t)\)をラプラス変換を用いて求めよ。スイッチSをオンした時の時間を\(t=0[s]\)とする。スイッチSをオンする前には、コンデンサCに蓄えらえている電気量\(q(t)\)は0とする。

 〇解説

  ①電圧に関する式を立てる

RL直列回路と同じように、数値の代入は後にして電圧に関する式を書きます。コンデンサの電圧は\(\frac{Q}{C}\)です。コンデンサにたまる電気量Qは、時間がたつにつれて変化する時間関数なので、\(q(t)\)と表します。

$$V_R+V_C=Ri(t)+\frac{q(t)}{C}=E・・・①$$

 

 

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あれ?RL直列回路とは違って、「\(i(t)\)」と「\(q(t)\)」の二種類の関数が出てきたんですけど、、どうやってラプラス変換するんですか?

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あおい

確かに、\(q(t)\)があると、ラプラス変換したときに\(I(s)=○○\)って表せないから、\(i(t)\)を求めることができないよね。そういう時は、\(q(t)\)を\(i(t)\)に変換して変数を全て\(i(t)\)にそろえるんだよ。

電流と電気量の関係を式で表すと \displaystyle i(t)=\frac{dq(t)}{dt}となります。「電気量を微分すると電流になる」ということですね。

では、「電気量を微分すると電流になる」の逆を考えてみましょう。「電流を積分すると電気量になる」となりますね。これを式で表すと、

$$\int i(t) dt=q(t)・・・②$$

②の式を①の式に代入します。

$$Ri(t)+\frac{\int i(t) dt}{C}=E・・・③$$

これで、変数が\(i(t)\)にそろいました。

  ②両辺をラプラス変換

③の式を暗記表をもとにラプラス変換すると④の式のようになります。

$$RI(s)+\frac{1}{C}(\frac{I(s)}{s}+\frac{q(0)}{s})=\frac{E}{s}・・・④$$

\(q(0)\)というのは、スイッチを入れる1つ前の場面、つまりスイッチが開いている場面のときにコンデンサにたまっている電気量のことです。問題文より、スイッチを入れる前の電気量は0となっているので、\(q(0)=0\)です。

$$RI(s)+\frac{I(s)}{Cs}=\frac{E}{s}・・・⑤$$

「\(I(s)=○○\)」の形に書き換え

⑤の式を「\(I(s)=○○\)」の形にします。

 \displaystyle I(s)=\frac{E}{s}×\frac{Cs}{RCs+1}=\frac{EC}{RCs+1}=EC\frac{1}{RCs+1}=EC\frac{\frac{1}{RC}}{s+\frac{1}{RC}}=\frac{E}{R}×\frac{1}{s+\frac{1}{RC}}・・・⑥

④逆ラプラス変換

次は逆ラプラス変換の行程です。⑥の式を、暗記表を基に逆ラプラス変換していきます。すると、

$$i(t)=\frac{E}{R}\mathrm{e}^{-\frac{1}{RC}t}・・・⑦$$

となります。

そして最後に⑦の式に、問題文で与えられた数値を代入していきます。

$$i(t)=\frac{3}{2}\mathrm{e}^{-\frac{1}{2×0.5}t}=1.5\mathrm{e}^{-t}$$

答えが導き出せました!

\(q(t)\)が少し厄介ですが、電流と電気量の考え方を理解していれば解けます。

 3.ラプラス変換を使った過渡現象の解き方のまとめ

ラプラス変換を使った過渡現象は、回路を流れる電流か電圧を求める問題がほとんどなので、以下の4つの手順を踏めば解けます。

  1. 電圧に関する式を立てる
  2. 両辺をラプラス変換
  3. 「I(s)=○○I(s)=○○」の形に書き換え
  4. ラプラス変換

何回も解いて練習してみましょう!

ラプラス変換を使った過渡現象の問題(直列回路)も集めてみたのでぜひ見てみて下さい。

関連記事>>>ラプラス変換を使った過渡現象の練習問題~直列回路編~