RC回路の過渡現象の解き方
今回はRC回路の過渡現象の問題が解けない・・・。というお悩みに答えます!
- RC回路過渡現象での電流と電圧はどう変化しているのか
- RC過渡現象の練習問題
過渡現象では、
- 電流や電圧がどう変化しているのか
- 時定数の意味
をしっかり把握しましょう。
ちなみに、過渡現象は「ラプラス変換」を使って解くこともできるんですよ。「ラプラス変換を使った過渡現象の解き方~直列回路編~」で解説しています。
1.RC回路の過渡現象 電流と電圧の変化
〇パターン1(電源がある回路)
パターン1では下の回路を例にして、スイッチを入れる前~スイッチを入れた直後~十分時間が経つまでのRC回路の電圧と電流の様子を見てみましょう。
・スイッチを入れる前
- 流れる電流・・・0[A]
- コンデンサの両端電圧・・・0[V]
- 抵抗の両端電圧・・・0[V]
・スイッチを入れた直後
- 流れる電流・・・E/R[A]
- コンデンサの両端電圧・・・0[V]
- 抵抗の両端電圧・・・E[V]
・スイッチを入れて十分時間が経ったとき
- 流れる電流・・・0[A]
- コンデンサの両端電圧・・・E[V]
- 抵抗の両端電圧・・・0[V]
スイッチを入れて十分時間が経つと、今度はコンデンサの両端電圧がE[V]となり、抵抗器の両端電圧は0[V]となります。
〇パターン2(電源電圧がない回路)
パターン2は電源電圧がないタイプの回路です。下の回路を例にして、スイッチを入れる前~スイッチを入れた直後~十分時間が経つまでのRC回路の電圧と電流の様子を見てみましょう。
・ スイッチを入れる前
- 流れる電流・・・0[A]
- コンデンサの両端電圧・・・E[V]
- 抵抗の両端電圧・・・0[V]
スイッチを入れる前は、回路はつながっていないので電流は全く流れません。抵抗の両端電圧はR×I=Vより、I=0[A]なので両端電圧も0[V]です。また、コンデンサに電荷がたまっているので、コンデンサの両端電圧はE[V]です。
・スイッチを入れた直後
スイッチを入れた瞬間、回路がつながるのでコンデンサの両端電圧と抵抗器の両端電圧が等しくなりE(V)となります。そして、スイッチを入れてから十分時間が経つまで、コンデンサの電圧と抵抗の電圧は同時に変化していきます。さらに、電流も電圧に伴って変化していきます。
電流は抵抗で消費されていくので、コンデンサと抵抗の両端電圧は共に0[V]に向かっていきます。
・スイッチを入れて十分時間が経ったとき
- 流れる電流・・・0[A]
- コンデンサの両端電圧・・・0[V]
- 抵抗の両端電圧・・・0[V]
スイッチを入れて十分時間が経つと、コンデンサに溜まっていた電荷を全て出し切り、抵抗ですべて消費したので、流れる電流は0[A]になり、コンデンサと抵抗の両端電圧は0[V]になります。
2.RC回路過渡現象の練習問題
〇練習問題①
問:図の回路でコンデンサに初期電荷が存在している。スイッチを閉じてから1秒後の電流値を、スイッチを閉じた直後の電流値と比較した時の比で最も近いのはどれか。ただし、自然対数の底e=2.73とする。(臨床工学技士 国家試験 第28回 午後47)
〇練習問題②
問:図の回路でスイッチを閉じて100[μs]経過したとき、コンデンサの端子電圧は何[V]か。ただし、スイッチを閉じる前のコンデンサの電荷は0とし、自然対数の底は2.7とする。(臨床工学技士 国家試験 第11回 午後10)
3.RC回路過渡現象 解答と解説
〇練習問題①
・解答
0.37
・解説
この問題は、スイッチを閉じた直後の電流値と比較した時の比を聞いているので、
- スイッチを入れて1秒後の電流
- スイッチを入れた直後の電流
の2つを求める必要があります。
①スイッチを入れて1秒後の電流を求める
電流を求めるには「電圧(V)」と「抵抗値(Ω)」の2つの材料が必要です。既に「100[kΩ]」という抵抗値が出ているので、あとはスイッチを入れて1秒後の抵抗器の両端電圧が分かればいいですね。
問題では「図の回路でコンデンサに初期電荷が存在している」とあるので、コンデンサにすでにMaxの電圧がかかっているということです。問題にコンデンサの電圧は書いていないので、仮に10[V]と置きましょう。
「時定数」とは、ここでは「コンデンサにかかっているMaxの電圧の37%の電圧に落ちるまでの時間」です。つまり1秒後に、最大10Vだったコンデンサの電圧はその37%である3.7Vまで落ちてしまうのです。コンデンサの両端は抵抗とつながっているので、抵抗器の両端電圧もスイッチを入れてから1秒後に3.7Vになります。
②スイッチを入れた直後の電流を求める
スイッチを入れた直後は、コンデンサの電圧は最高電圧である10Vのままです。ということは、抵抗器の両端電圧も10Vです。よってスイッチを入れた直後に流れる電流は10/100k=0.1[mA]
- スイッチを入れて1秒後の電流・・・0.037[mA]
- スイッチを入れた直後の電流・・・0.1[mA]
という結果が出ました。2つの値の比は0.37となります。
〇練習問題②
解答
1.26[V]
解説
今度はコンデンサの両端電圧を求める問題です。しかも「スイッチを閉じる前のコンデンサの電荷は0とし」とあるので、コンデンサの両端電圧は最初0[V]ということですね。
「時定数」は、この場合「コンデンサの電圧が、最大電圧の63%分上昇するまでの時間」です。時定数をTとして求めると、T=CR=10[kΩ]×0.01[μF]=0.0001[s]=100[μs]です。つまり、「最大電圧(2[V])の63%」が答えになります。
スイッチを入れてすぐは、コンデンサの両端電圧は0[V]で、抵抗器の両端電圧は2[V]ですが、100[μs]後、抵抗器の両端電圧は最大電圧2[V]の37%である0.74[V]まで電圧が落ちてしまいました。
一方でコンデンサの両端電圧は2-0.47=1.26[V]まで上昇します。この1.26[V]とは、最大電圧2[V]の63%分です。よって答えは1.26[V]です。
4.RC回路の過渡現象 まとめ
このように、過渡現象は
- 電流や電圧が場合によってどう変わるのか
- 時定数の意味
をしっかり把握しておけば解けるようになります。
ちなみに、練習問題②はラプラス変換でも解くことができます。