【第2種ME試験】フローチャート問題を大解説!~第40回 午前36~
今回は、第二種ME試験のフローチャート問題を解説していきます。
国試でも出題されていますが、第二種ME試験の問題はちょっと難しめですね。
1つひとつ順番に解説していきます。
1.フローチャート問題
図のフローチャートで計算終了時のX[1]の値はどれか。 ただし、X[N]は配列変数を意味し、Nの値によって別の変数として扱う。(第二種ME試験 第40回 午前36)
- 0
- 1
- 2
- 3
- 4
2.フローチャート問題 答え
答えは2番の1です。解き方を解説していきますね。
1巡目
「開始」から進むと、X[0]・X[1]・X[2]・Nの最初の値が指定されています。
N←0の次はN<2にぶつかります。
この時点でN=0で、0<2の等式が成り立つのでYESの方に進みます。
次はX[N]<X[N+1]です。この時点でN=0なのでX[0]<X[1]と書き換えられますね。
この時点でX[0]=4、X[1]=3なので、4<3。この等式は成立しないので「NO」へ進みます。
2巡目
このコーナーで、X[0]・X[1]・Y・Nの値が置き換わります。
Y←X[N]
X[N]←X[N+1]
X[N+1]←Y
Yは、X[N]に置き換わります。この時点でX[N]=X[0]=4なので、Y=4となります。
X[N]はX[N+1]に置き換わります。この時点でX[N+1]=X[1]=3なので、X[N]=X[0]=3となります。
X[N+1]はYに置き換わります。さっきY=4となったので、X[N+1]=X[1]=4となります。
次はN←N+1にぶつかります。この時点でNはまだ0です。しかしここで1を足してN=1となりました。
ちなみに、X[2]の2巡目の値は指定されていないので、1巡目の値と同じままです。
次はまたN<2にぶつかります。この時点でN=1で、1<2の等式が成り立つのでYESに進みます。
次はX[N]<X[N+1]です。この時点でN=1なのでX[1]<X[2]と書き換えられますね。
この時点でX[1]=4、X[2]=1なので、「4<1」。この等式は成立しないので「NO」へ進みます。
3巡目
このコーナーで、X[1]・X[2]・N・Yの値が置き換わります。
Y←X[N]
X[N]←X[N+1]
X[N+1]←Y
Yは、X[N]に置き換わります。この時点でX[N]=X[1]=4なので、Y=4となります。
X[N]はX[N+1]に置き換わります。この時点でX[N+1]=X[2]=1なので、X[N]=X[1]=1となります。
X[N+1]はYに置き換わります。さっきY=4となったので、X[N+1]=X[2]=4となります。
次はN←N+1にぶつかります。この時点でNはまだ0です。しかしここで1を足してN=1となりました。
ちなみに、X[0]の3巡目の値は指定されていないので、2巡目の値と同じままです。
次はまたN<2にぶつかります。N=2なので、2<2。等式が当てはまらないのでNOの方に進みます。
これでフローチャートは終了です。
この時点でのX[1]は1ですね。
よって答えは2番の1となります。
ME学生にオススメの国家試験勉強サイト~mgkca~
※案件ではありません。
皆さんは「mgkca」というサイトをご存知でしょうか。
臨床工学技士国家試験の過去問が解けるサイトで、もう既に使ってるよーっていう人もいるかもしれません。
今回は
- mgkcaの問題を解く機能が有料化した件
- mgkcaを使ったオススメの勉強法
についてお話しします。
大学のテストで国家試験の過去問が出る大学もあると思います。
このサイトは、国家試験対策はもちろん、日々の定期テスト対策にもなりますよ。
1.問題を解く機能が有料化します
2021年5月5日に、管理人さんがこんな通知を出しました。
ご利用いただきありがとうございます。
早速ですが、近日中にブラウザから問題を解答する機能については有料化しようと考えております。 予想より大変多くの方が利用して頂いてるため、負荷が大きくなっているのが理由です。
また今後、問題と新機能の追加を考えています。
新機能は問題の難易度を数値化して、難易度の低い問題から優先的に出題させる機能を考えています。また、これまでは国家試験第1回からすべての問題を出題していましたが、今後は最新の回から優先的に出題されるように変更します。
よろしくお願いいたします。
(引用元:おしらせ -臨床工学技士国家試験対策サイト)
やはり、たくさんの人が利用しているため、さすがに無料では限界があるようで、問題を解く機能を有料化したそうです。問題一覧が見られるページは無料で使えますよ。
ですが、月額たったの300円です。これならバイトしてなくても利用できそうですね。1週間の無料体験期間があるので、試しに使ってみてはどうでしょうか。
mgkcaのサイト>>>ホーム -臨床工学技士国家試験対策サイト
- Googlepay
- Applepay
- クレジットカード払い
が選べるようなので、自分に合った方法を選んでみてください。
2.mgkcaを使ったオススメの勉強法
mgkcaの問題を1つ解く前に「+α」の作業をしてみましょう。
ただ問題を解くだけの解き方だけでは足りません。
1つ目の例はこの問題。
現在、透析導入患者の原疾患で最も多いのはどれか。
1. 腎硬化症
2. ループス腎炎
3. 糖尿病性腎症
4. 多発性嚢胞腎
5. 慢性糸球体腎炎
ただ正解の選択肢のボタンを押して「よっしゃ!正解~!」と次の問題に進んではいけません。
やっているうちに答えを覚えてきてしまい、勉強している感覚がなくなってしまいます。
もし上の問題の選択肢が無く、ただ「透析導入患者の原疾患のランキングを1位から3位まで書け」という問題が出たとしたら、あなたは全て書けますか?
そのため、正解のボタンを押す前に一度透析導入患者の原疾患のランキングを1位から3位まで、まず自分で書いてみるのです。
その後、正解のボタンを選んで答えを確認し、次の問題に進みます。
2つ目の例は正しいor誤っている問題を答える問題。
ホルモンについて誤っているのはどれか。
a. バソプレッシンは主に腎臓の集合管に作用する。
b. 成長ホルモンは副腎より分泌される。
c. 原発性甲状腺機能亢進症では甲状腺刺激ホルモン(TSH)の分泌が亢進する。
d. 副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は糖質コルチコイドの分泌を刺激する。
e. 副甲状腺ホルモン(PTH)は血中カルシウム濃度を上昇させる。
ここでも、それぞれの選択肢において誤っているところは、まず自分で正しい文に直してみましょう。
a.・・・〇
b.・・・副腎→下垂体前葉
c.・・・亢進→低下
d.・・・〇
e.・・・〇
のような感じです。
その後、正解のボタンを選んで答えを確認し、次の問題に進みます。
国家試験問題は、あらかじめ「a,b,c」「a,b,e」のように答えの組み合わせが決まっていますが、普通に「正しいものを全て選んでください」という問題が出されたとき、あなたは確実に答えられますか?
知識を身に着けやすくするためにも、1つひとつの選択肢のどこが正しいのか、誤っているのかをハッキリしておきましょう。
IABPの合併症で腸管虚血が起こる理由2つ
ある日、臨床工学技士国家試験の問題を解いていたとき。
こんな問題が出てきました。
IABPによる合併症で誤っているのはどれか。
(臨床工学技士国家試験 第30回 午後73)
- 腸管虚血
- 大動脈解離
- 血小板数の減少
- 細菌感染
- 急性心筋梗塞
答えは5番なのですが、
そのとき「えっ?!なんでIABP使ったら腸管虚血になるの?」と疑問に思いました。
IABPって心臓の動きを助けるはずなのになんで逆に血流が悪くなるわけ?
多分同じように思った人もいるはず・・・。
解説には肝心の理由が書いてありません。
そこで、自分なりに調べてみましたので、分からなかった人は要チェックです。
いろいろ理由はありますが、その中でも理解しやすい理由を2つピックアップしてみました。
1.体格に合わない長すぎるバルーンを使っているから
IABPは下行大動脈に留置します。
そして下行大動脈をさらに下に進むと、腸に分岐する動脈が現れます。
普通は、他の臓器に分岐する動脈をふさがないようにバルーンを留置しますが、バルーンが長すぎると、腸に分岐する動脈をふさいでしまうことになります。
その結果、腸管虚血となるのです。
2.シースが邪魔をしているから
シースというのは、カテーテルを抜き差しするときの出血を減らすための道具です。
カテーテルにはいろいろな種類があり、状況により使うカテーテルを変えるときがあります。
そんな時に、いちいち皮膚を介して直接抜き差ししていたら血がビュービュー出てしまい大変なことになります。
だから、皮膚にあらかじめストローのようなカテーテルの出入り口を作っておくことで、抜き差しをしやすくしているのです。
そんなシースはIABPでも使います。
ですが、そのシースが血管を塞いでしまうことで、虚血になってしまいます。
シースを使わないでバルーンを挿入したり、細いバルーンを使ったりすることで虚血の発生頻度を抑えることができます。
リミッタ回路の練習問題を解いてみよう!
別の記事で、リミッタ回路の解き方を説明しました。
今回は、その解き方を活用して実際に国家試験に出された問題を解いてみましょう。
1..リミッタ回路 練習問題
基本的なダイオードの原理が理解できれば問題は解けます!まずは自力で解いてみましょう。
〇練習問題①
図1の電圧Viを入力したとき、図2の電圧Voを出力する回路はどれか。ただし、ダイオードは理想ダイオードとする。(臨床工学技士 国家試験 第32回 午前53)
〇練習問題②
下図の回路に1kHz,10Vp-pの正弦波Viを入力した。出力波形を描け。ただし、ダイオードD1,D2は理想的なものとし、バイアス電源E1,E2の内部抵抗は無視するものとする。(臨床工学講座 医用電子工学 第2版 p38 問題6)
2.リミッタ回路 解答と解説
〇練習問題①
解答
2
解説
今度は並列回路ですね。少し難しそうですが2の回路はパターン1とパターン2の回路を組み合わせたような回路になっているんです。
問題で与えられている入力波形と出力波形で異なっているのは
- Vi>2[V]
- Vi<-1[V]
のときです。Vi>2[V]のときから見ていきましょう。
Vi>2[V]のときに出力Vo=2[V]になる回路を探します。4,5は、仮にダイオードが導線状態になってもVo=-2[V]になってしまうので選択肢から消えます。
1,2,3の中から、Vi>2[V]のときに2Vバイアス電源の上にあるダイオードに順方向電圧がかかるものを探します。
2だけになるので、答えは2です。
〇練習問題②
解答
解説
入力波形はこんな感じ。
出力波形を考えるときは、バイアス電圧を基準にして考えます。この場合、
- 5[V]>Vi>2[V]
- 2[V]>Vi>-4[V]
- -4[V]>Vi>-5[V]
の3通りを考えます。
5[V]>Vi>2[V]
このとき、D1には順方向電圧がかかりますが、D2には逆方向電圧がかかります。よって出力Vo=2[V]
2[V]>Vi>-4[V]
ここは入力が正になったり負になったりしてややこしいので、Vi=1[V]として考えます。すると、2つのダイオードに逆方向電圧がかかってしまうので、回路に電流は流れません。よって出力Vo=Vi[V]
-4[V]>Vi>-5[V]
このときD1には逆方向電圧がかかりますが、D2には順方向電圧がかかります。よって出力Vo=-4[V]
まとめると、出力波形はこうなります。
〇練習問題③
解答
3
解説
問題が意味しているのは、「電流D2には流れず、D1に流れるときの入力電圧は何か?」ということです。
電流がD2には流れず、D1に流れるときは、入力が「-3[V]以下のとき」というのは理解できるでしょうか?
上の図のように電流が流れるような入力電圧を見つけましょう。
まずはA~Eの範囲のそれぞれにおいて、任意の入力電圧を自分で決めて、図を描きながら解いてみましょう。例えば、Aの範囲を考えるときは5[V]を入力して、Bの範囲を考えるときは-1[V]を入力してみるなど。
心電図波形・QRS波のトリビア~右脚ブロックと左脚ブロック~
今回は、心電図波形のうちST部分を細かく見てみます。
- 正常なQRS波の条件
- 異常なQRS波の原理
について解説します。
1.正常なQRS波
そもそも「QRS波」というのは、心電図波形で言うとQ波のはじまり~S波の終点です。
正常な幅は0.1秒未満(2.5マス分)。
ちなみに、正常な幅のQRS波を「marrow QRS」
正常より幅の広いQRS波を「wide QRS」といいます。
「marrow」は英語で「狭い」という意味。そのまんまですね。
2.異常なQRS波
〇右脚ブロック
右脚ブロックというのは、刺激伝導路のうち右脚が遮断された状態です。
そのため電気信号は下のような順序で伝わります。
- 房室結節にたどり着いた電気信号は、左脚から右脚に行こうとするが、右脚はブロックされているので右脚に行こうとしても行けない。
- 右脚に行けないので、電気信号は左脚を伝わる。
- 左脚を伝わった後は、左室から右室方面へ伝わる。
V1目線の心電図波形は下の通りです。
P波が記録された後、r波というちょっと上がった波が出てきます。r波は、左脚から右脚に移ろうとする電気信号です。V1電極に向かうように流れるのでちょっと上がっています。
r波の後はS波が来て少し下がります。S波は、電気信号が左脚を伝わっているためです。V1電極から遠ざかるように伝わるのでちょっと下がっています。
S波の後は大きなR波がズドーンと上昇しています。R波は、電気信号が左心系から右心系方面へ伝わっているからです。V1電極に向かうように流れるので大きく上がっています。
ちなみに、このR'波が大きくなるV1波形は、それぞれの波の名前をとって「rSR'(読み:アール エス アールダッシュ)」と言います。
〇左脚ブロック
左脚ブロックというのは、刺激伝導路のうち左脚が遮断された状態です。
そのため電気信号は下のような順序で伝わります。
- 房室結節にたどり着いた電気信号は、左脚から右脚に伝わり、右脚を伝わる
- 右心系から左心系へ全体的に伝わる
- 脱分極
V1目線の心電図波形は下の通りです。
P波が記録された後、r波というちょっと上がった波が出てきます。r波は、房室結節にたどり着いた電気信号が左脚から右脚に伝わり、右脚を伝わる電気信号です。V1電極に向かうように流れるのでちょっと上がっています。
r波の後はS波が来て大きく下がります。S波は、電気信号が右心系から左心系へ全体的に伝わるためです。V1電極から遠ざかるように全体的に伝わるので、大きく下がっています。
S波の後は、脱分極のためにT波が上昇しています。
心電図波形・Q波のトリビア~異常Q波~
今回は、心電図波形のうちQ波を細かく見てみます。
- 正常なQ波の条件
- 異常なQ波の原理
について解説します。
1.正常なQ波
- 深さ・・・R波の高さの1/4未満の高さ
- 幅・・・・0.04秒未満(1マス分)
2.異常なQ波
Q波は、左脚から右脚に向かう電気信号を反映しています。
心電図電極が見ている方向から遠ざかるように電流が流れるので、本来Q波はちょっと下向きになっています。
しかし、心電図でR波として表される部分が壊死してしまうと、電極は壊死した部分を反映しなくなり、壊死部分の向こう側である左脚→右脚の電流(Q波)を捉えるようになります。
よって、正常なQ波が記録された後、本来R波が記録される部分にもQ波が反映されます。その結果、Q波が2つ重なりQ波が大きくなったように見えるのです。
ちなみに、この心内膜から心外膜の全層に広がっている心筋梗塞を「貫壁性心筋梗塞」といいます。
そして、心筋は再生することがないので、一度異常Q波が出ると一生残ってしまいます。
そのため、異常Q波が残っていると「昔、この患者さんは心筋梗塞があった」という目印になるのです。
A-aDO2~肺胞と動脈血でPO2が違うのはなんで?~
肺胞の中の酸素分圧(肺胞気酸素分圧:PAO2)の正常値は100mmHgです。一方で肺静脈を流れる動脈血の酸素分圧(動脈血酸素分圧:PaO2)の正常値は90~95mmHgです。
PaO2の正常値はなぜ90~95mmHgなの?という記事で、PaO2の正常値が90~95mmHgになる理由を解説しました。
そこで、肺胞の中にある酸素がそのまま血管に吸収されず、PaO2が100mmHgとなるのは「A-aDO2」という謎の存在があるからだとお話ししました。
A-aDO2のことについては話さなかったので、この記事でA-aDO2について解説していきます。
- 1.A-aDO2って何?
- 2.A-aDO2の正常値
- 3.A-aDO2が存在するワケ①:気管支静脈血
- 4.A-aDO2が存在するワケ②:テベシウス静脈
- 5.A-aDO2が存在するワケ③:肺シャント様血流
1.A-aDO2って何?
A-aDO2とは、「肺胞気動脈血酸素分圧較差」のことです。
漢字だらけで分からないと思うので簡単に説明すると
「肺胞の中の酸素分圧と、動脈血の酸素分圧の差」のことです。
「A」が「肺胞気」、「a」「動脈血」「D」は「違い」を表す英単語「Difference」を表しています。
ちなみに、血液ガス界隈では「アルファベットの大文字が気体、小文字が液体を表す」というルールがあります。覚えておきましょう。
2.A-aDO2の正常値
A-aDO2の正常値は約10mmHgです。
10mmHgより大きいということは、肺胞の中の酸素分圧と、動脈血の酸素分圧の差が大きいということです。
なので、肺胞と毛細血管の間で上手くガス交換が行われていないことになりますね。
肺胞と動脈血でPO2が違うのは、このA-aDO2が存在するからです。
3.A-aDO2が存在するワケ①:気管支静脈血
酸素を受け取る肺静脈には、酸素の豊富な動脈血が流れています。
しかし、肺静脈に気管支を栄養し終えた気管支静脈血が流れ込むので、PO2が5~10mmHg下がるのです。
4.A-aDO2が存在するワケ②:テベシウス静脈
「テベシウス静脈」とは、冠状静脈から心筋を栄養した後の血液の一部が、心臓の内腔に直接流れる、とても小さい血管のことです。
テベシウス静脈の血液は、普通右心房に流れますが、中には左心系に流れるテベシウス静脈もあります。
左心系に静脈血が流れることでPaO2が下がり、肺胞と動脈血でPO2に差ができるのです。
5.A-aDO2が存在するワケ③:肺シャント様血流
いくら健康な人でも、3億個もある肺胞のうち、いくつかは拡張が不十分だったり、血流が悪い部分があります。この部分では、当然ガス交換は不十分になります。
この部分では、肺胞気の酸素を動脈へ受け渡しにくいので、わずかにA-aDO2が生じます。
ここまで紹介してきた3つの原因が合わさって、A-aDO2は10mmHgとなるのです。
①+②+③=10mmHgのA-aDO2
PiO2やPAO2は正常なのに、PaO2が低いときは、A-aDO2が上昇している可能性があると予測できますね。
「ネフローゼ症候群」と最期まで闘ったプロ棋士
臨床工学技士を目指す学生なら必ず勉強する「ネフローゼ症候群」。
今回は、そんなネフローゼ症候群と闘いながら、将棋の名人を目指した村山聖(むらやま さとし)さんをご紹介しつつ、ネフローゼ症候群について勉強していきたいと思います。
たまたま読んでいた小学生向け雑誌「しゃかぽん」が村山さんのことを紹介しており、ネフローゼ症候群にかかっていたという情報もあったので、取り上げてみました。
1.村山聖さんのプロフィール
2.村山聖さんの一生
広島で生まれた村山聖さんがネフローゼ症候群にかかったのは、わずか5歳の時でした。
ネフローゼ症候群は小児で発症するパターンが多いのです。
標準的な治療を一定期間行なっても、病状が改善しないネフローゼ症候群は「難病」に指定されています。
入院中に将棋と出会い、朝から晩まで将棋に没頭するようになります。
そして1986年11月5日、17歳のときに晴れてプロ棋士となりました。
将棋以外の衣食住には無頓着で、ネフローゼ症候群の症状である浮腫で独特な風貌だった村山さんは、「不潔だ」と言われるようになり、「怪童丸」という異称もつくようになりました。
生前の村山聖さん>>>生前の村山聖。 [画像ギャラリー 4/4] - 映画ナタリー
ネフローゼ症候群では、糸球体の濾過機能が悪くなり、アルブミンなどのタンパク質がたくさん濾過されてしまいます。
その結果、血液中のタンパク質が少なくなり(低タンパク血症)、尿にタンパク質が多く含まれるタンパク尿が出るようになるのです。
ちなみに、成人のネフローゼ症候群の診断基準は
と決められています。
血管に水分を保っておく力(膠質浸透圧)を担うアルブミンが血液中からなくなると、血管の外、組織へと水分がどんどん出て行ってしまいます。
そして、顔や手足がむくんでしまうのです。
それでも「名人になりたい」という夢をずっと抱いてきた村山さんは、世間の声に負けずに努力を重ね、「東の羽生、西の村山」と言われるまでになりました。
その後膀胱がんにかかり、将棋を続けながら病と闘ってきましたが、1998年8月8日に29歳で亡くなりました。
病と闘いながら生涯を将棋に捧げた村山さんの一生は、2017年に映画にもなりました。
心電図波形・ST部分のトリビア~ST上昇とST下降~
今回は、心電図波形のうちST部分を細かく見てみます。
- 正常なST部分の条件
- 異常なST部分(ST下降・ST上昇)の原理
について解説します。
1.正常なST部分
ST部分とは、S波とT波の間にある直線部分です。
正常とされるST部分は、基線から上下0.1mV(1マス)未満です。
「基線」とは、心臓のどの部分も興奮していないことを表す、起点となる線のこと。
2.異常なST部分
〇ST下降(狭心症)
ST下降は、冠動脈にプラークができ、血流が悪くなることから起こります。
どういう原理になっているのでしょうか。
①冠動脈に小さいプラークができる
②プラークができた先の冠動脈の血流が悪くなる
③心筋への栄養供給の一部ができなくなる
④心筋の内側が炎症を起こし始める
⑤炎症部の電位が高くなり、心筋の内側から外側へ電流が流れる
ちなみに、心筋の内側から外側へと流れる電流のことを「障害電流」といいます。
⑥心電図モニタが障害電流を読み取り、心電図の基線が上がる
心電図には、「心電図電極に近づく電流は上向き、遠ざかる電流は下向きに表示される」という決まりがあります。
そのため、常に障害電流を読み取るようになった電極は、近づいてくる障害電流を基準にしようとするのです。その結果、基線が元より上がります。
ST部分だけ基線が上がっていないのはなぜでしょうか。
実はST部分は「不応期」と呼ばれ、どんな電流にも心筋が反応しない時期なのです。
そのため、ST部分は障害電流の影響を受けません。
結果、ST部分だけが下がったように見えることから「ST下降」という現象が起こります。
〇ST上昇(心筋梗塞)
ST上昇は、冠動脈にプラークができて血流が遮断されることから起こります。
①冠動脈にプラークができる
ST下降の時とは違って、今度は冠動脈が完全にプラークによって閉塞されてしまいます。
②プラークができた先の冠動脈の血流が途絶える
③冠動脈が閉塞した部分だけ、心筋への栄養供給ができなくなる
④炎症が心筋の内側から外側まで全体に広がる
⑤障害電流が、炎症を起こしていない左右へ広がる
⑥心電図モニタが障害電流を読み取り、心電図の基線が下がる
心電図には、「心電図電極に近づく電流は上向き、遠ざかる電流は下向きに表示される」という決まりがあります。
そのため、常に障害電流を読み取るようになった電極は、ST下降とは違って左右へ遠ざかる障害電流を基準にしようとするのです。その結果、基線が元より下がります。
ST部分だけ基線が下がっていないのは、ST部分が「不応期」と呼ばれ、障害電流の影響を受けないからです。
結果、ST部分だけが上がったように見えることから「ST上昇」という現象が起こります。
PaO2の正常値はなぜ90~95mmHgなの?
学校で「PaO2(動脈血酸素分圧)は90~95mmHg」と習うと思います。
でも、なんでPaO2=90~95mmHgになるか知っていますか?
ここでは、なぜPaO2が90~95mmHgになるのか、4つのステップを踏みながら見ていきましょう。
暗記事項はただ覚えるのではなく、理屈を理解することが大事です。
1.大気中酸素分圧(PO2)の正常値
一般的に、私たちが住む生活圏の大気中の酸素濃度は21%ですね。
大気圧(1気圧)は760mmHgなので、PO2は
PO2=760mmHg×0.21=160mmHgと求められます。
2.吸入気酸素分圧(PiO2)の正常値
「吸入気」というのは、吸い込む空気=気道内の空気のことです。
PiO2はどれくらいでしょうか。
先ほど、大気圧は760mmHgで考えました。
しかし、気道の中は体温で温められているので、気道内に入った大気の一部は水蒸気になってしまうのです。その水蒸気になってしまうのは760mmHg中47mmHg。この47mmHgという数値は決まっているものなので、しっかり覚えておきましょう。
だから、呼吸器界隈での大気圧の計算は、水蒸気になってしまう分の圧力を予め引いて、760-47=713mmHgと計算するのです。
よって、実際に吸う酸素の圧力は
PiO2=(760-47)×0.21=約150mmHg
と求められます。
PO2より10mmHgだけ低くなっていますね。
ちなみに、ここでは酸素濃度として「0.21」をかけましたが、吸入する酸素濃度によって数値は変わってきます。
人工呼吸器をつけている患者さんは、吸入酸素濃度(FiO2)は必ずしも21%とは限りません。
3.肺胞気酸素分圧(PAO2)の正常値
PAO2というのは、肺胞気酸素分圧のこと。口から入って、気道を通って、肺胞に到達した時の酸素分圧のことです。
肺胞内のO2が、肺動脈から急激に排出されるCO2に押されるのと同時に、肺胞気のO2も血液中に溶け込んでいきます。その結果、PAO2はPiO2より低くなってしまうのです。
PAO2は「肺胞気式」という式で求めることができます。
(760-47)×FiO2というのは、先ほど求めたPiO2ですね。
PaCO2/0.8というのは、肺胞から血液へと溶け込んでいく酸素分圧のことです。
「0.8」は呼吸商といいます。
※呼吸商・・・生成されたCO2量をO2量で割ったもの
呼吸商でPCO2を割れば、PCO2をPO2に換算することができます。
FiO2=21%だとすると、PaCO2の正常値は40mmHgなので、
PAO2=(760-47)×0.21-40/0.8=100mmHg
となります。
4.PaO2の正常値
結論から言うと、PaO2の正常値は90~95mmHgです。普通に考えれば、肺胞の中にある酸素がそのまま血管に吸収されるはずなので、PaO2も100mmHgとなるはずです。
なぜPAO2と差が出てくるのでしょうか。
実は、肺胞→血管の間には、ガス交換に関わらない「A-aDO2」という部分が存在します。
そのため、PaO2はPAO2より数mmHg小さい90~95mmHgとなるのです。
なので、100mmHgの酸素分圧全てが移動するわけではありません。
A-aDO2についてはまた別の記事で紹介しますね。